ここでは、コーチングではどのような会話でセッションが進んでいくのか、その会話例をご紹介します。クライアントのタイプやニーズ、テーマによっても進め方やフォーカスする点は異なりますが、普段の会話との違いを見ていただければと思います。
テーマ①:見方の転換
コーチ「さて、今日は何について扱いたいですか?」
クライアント「上司についてなんですが、全然こっちのことをわかってないんですよ。このままのやり方じゃダメだって何度も提案しているのに聞く耳持たずで、このままだとこっちのストレスが溜まる一方ですよ。これ以上どうしたらいいかわからなくて。」
コーチ「何度も提案しても変化がないとストレスを感じますよね。OO(クライアント)さんは、今の状況がどうなったらいいなと思いますか?」
クライアント「そりゃ、こっちの話を聞いてもらって上司が変わってくれるのが一番ですよ。」
コーチ「もし上司が変わったら、どんな変化として現れるんですか。」
クライアント「今よりもっと話しやすくなるだろうし、いきなりこっちの意見を否定することもないだろうな。どうしたらいいかについてもっと建設的に、打ち合わせができるんだと思う。」
コーチ「その変化って、OOさんにとってどんな意味を持つんですか?」
クライアント「うーん、自分が仕事をやりやすくなるし、やっぱりちゃんと認められている気がすると思う」
コーチ「もし、そういう風に感じられたら、自分の中で何が変わりますか?」
クライアント「もっと意欲もでるし、今より会社のためを考えて動こうとすると思う」
コーチ「なるほど。改めてですが、今OOさんが求めていることは何ですか?」
クライアント「やっぱり、上司にちゃんと伝えるべきことは伝えて、会社がいい方向にいくように自分も考えて行動したい。」
コーチ「ここまで話していて気づいたことはありますか?」
クライアント「意外と自分は、上司に認めてほしかったんだなって。ちゃんと評価されたかったのかもしれないですね。それと、上司を否定してばかりになっていた気がします。」
コーチ「そういう思いに気づかれたんですね。では、再度今OOさんにとって重要なことは何ですか?」
クライアント「感情的にならずに自分がやるべきことする、ですかね。」
コーチ「OOさんにとってのやるべきこととは?」
クライアント「今やっている**のプロジェクトでしっかりと成果を出すことと、意見の伝え方のスキルを磨くことですね。」
(このケースは、上司に提案を受け入れてもらうことが一見目標になっているに見えますが、クライアントが求めていたのは自分の努力への認知であり、その思いに気づいてからは落ち着きを取り戻し、本来自分がやるべきことにフォーカスが向き直しています。)
テーマ②:目標の明確化
コーチ「さて、今日は何について扱いたいですか?」
クライアント「最近、自分がどうしたいのかわからなくなってきて。今日は、それが明確になればいいなと思います。」
コーチ「なるほど。どういうことか、もう少し詳しく教えてもらえますか。」
クライアント「新卒で就職して与えられた仕事もこなしてある程度の結果も出してきたんですが、ある程度慣れてくると本当にこれでいいのかなって、このままいっていいんだろうかと思うようになったんです。」
コーチ「確かに、年数や状況が変わると感じ方も変化していきますものね。このままいっていいんだろうかっていうことは、このままいくバージョンと別バージョンの進み方があるってことですか。」
クライアント「まあそういう感じです。」
コーチ「それって、どんなイメージですか。それぞれ。」
クライアント「ええと、一つ目はこのままの仕事を続けて、ある程度昇給して、プライベートでも結婚して家庭を持って、その分野で経験を積んでいく、みたいな。もう一つは、何か別の、もっとやりたいことをやるようなイメージです。」
コーチ「なるほど、一つ目は現状維持もしくは現状を発展させていく感じですね。もう一つの方は、全く新しい道をいく感じですね。」
クライアント「はい、実はやってみたいけどやれてないことがあって。本当は**みたいな仕事をしてみたいと思っていたんです。」
コーチ「なんか今ちょっと、声のトーンが変わりましたね。(やってみたい仕事について聞いた後で)改めて、OOさんにとって、今何が明らかになったら一番いいですか。」
クライアント「そうですね、やっぱり、もう一つの道に踏ん切れない理由、ですかね。」
コーチ「了解です。では、今日のセッションではどこをゴールとしましょうか。」
クライアント「自分の中で迷っていること、踏ん切れなくしている理由をはっきりさせて、それに対してどうしたらいいかのアイディアが出せたらいいです。」
コーチ「いいですね、では今日はそこを目指して進めましょう。」
(今回は、セッションにおける目標の明確化の会話例になっていますが、ここでは自分の中にあるまだ曖昧な思いや感覚を具体化して、そこからまずどんな状況を目指すかを一緒に探っています。クライアントはやりたいことがわからないのではなく、すでに描いていることがあったものの、何らかのブロッカーがあることがわかったので、そちらの明確化と対策をまず進めていっているケースです。)