自己決定の力 

最近読んだ面白い研究について。神戸大学の西村和雄先生と同志社大学の八木匡先生による「幸福感と自己決定―日本における実証研究」。何とも興味深いテーマです。2万人の日本人に調査した結果、幸福感を決定する要因として高かったのが、健康、人間関係に続いて「自己決定」だったそうです。所得や学歴より自己決定の方が上という。日本に住んでいると、偏差値の高い学校、大企業ルートに乗れば幸せ街道まっしぐらのようなイメージがありますが、一概にそうとは言えず自分の意思でそれを選んだかどうかの方が大事というのがこの研究結果の面白いところ。

ここでいう自己決定とは主に進学先や就職先などで自分の人生の選択をすることとされています。ただそうした大きな決断だけではなく日々の仕事や生活でも、自分の意思で何かを選ぶことと充実感や達成感などのポジティブな感情との相関性は、日々のコーチングでも本当によく感じます。
(先ほどの研究はここから読めます →「幸福感と自己決定―日本における実証研究」https://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/18090006.html

自分で決めないと何が起こるか

コーチングの中でもよく見かけることですが、どんな状況でも自分で「こうしよう」と決めた人にはいくつか変化が起こります。使う言葉も自分が主語となることが多くなり、何をするかといった行動に関する表現が増えます。当然行動が増えると状況が変化する確率も高まります。いつも必ずうまくいくわけではないですが、うまくいった時は「やってよかった」と、何とも言えない充実感や自分への誇らしさなど得られるものが多くあるようです。

一方で、自分でどうするか決めないとどうなるのでしょうか。これもよく挑戦の初期によく起こりますが、辛い状況にあってもどうにもできない、諦めるしかないと感じながらだんだんと目の前の相手や周囲に対して不満が大きくなったり、自分への自信を失ったり、、、でもやっぱり我慢しかないと思い心身ともに疲弊していくというネガティブループに入ったりします。

または、そこまで辛い状態じゃなくても、何となく言われるがままにやっていたり、相手に変に思われないために合わせたりしている内に、自分が不利になる状況に陥っていたり、自分は本当はどうしたいかわからなるといったこともよくあります。結局長期的には、自分にとっての幸福とは逆の方向にズルズルと向かってしまうことが多いように思います。

「どうにかできるならしている!できないからこうなってるんじゃないか!」と言いたくなる気持ちも分かりますが、実はこれには解決法があります。

自分は何を選んでいるのか

先ほどの例にもありましたが、どんな状況でも自分でどうするか決める人とそうでない人の違いは何かというと、元々の性格や能力云々よりも、結局のところその人がどの段階で何を決めようとしているかの差なのだと思います。どうしようもない状況に対して「何とかしよう」としてみるのか、「どうしようもないから諦める」とするのか。問題そのものよりもまず今の状況のスタンスを選ぶところが違いを生み出しているように思います。

自分がどちらよりなのかは、まず現状に対して納得できているか見ればわかります。自分が今やっていることもしくは過去のトラブルの自身の言動に対して納得しているかどうかチェックしてみましょう。例えば「上司が支離滅裂でもうストレスマックスだ!」という状況に対して、「もう諦めるしかない」というスタンスを選んだとします。あなたはそれに納得していますか。それとも納得していませんか。納得していれば、あなたは自己決定しています。

一方で納得できていないのであれば、まず「どんな状況でも自分は選べる」ことを頭に叩き込むことです。納得できていないというのは、まだどこかで「相手や状況が変わりさえすれば、、」と自己決定の舵を人に渡して、自分の問題として捉えていない状態です。

しんどいが我慢する限り自分はリスクを取って行動しなくてもすむ。その状態では自己決定はできません。ここでの「我慢する」は自己決定ではなく、選択の放棄です。

選択肢をつくる

直接の解決策は思いつかなくても、まず今の状況に対してどうするかを選ぶことはできます。まず一段下げた段階から自己決定していくのです。ちょっとやってみる、何が何でも解決してやる、今は時間をおく、人に頼るなどどんなスタンスでいくかを決めてみてください。そこで納得してから、段階を一つ上げて実際の解決策や選択肢を考えていきます。もしスタンスが決まらない場合、まず「スタンスを決める」ところからやればいいのです。今後辛い状況に陥った時、自分はどんなスタンスでいきたいか。誰をロールモデルにしたらいいか。これまでどんな風に取り組んだ時はうまくいったか。この機会に考えておくと後々役に立ちます。

スタンスの次は実際の解決策です。先ほどの「上司が支離滅裂でもうストレスマックスだ!」ならば、どんな対処法が思いつきますか。部署異動を願い出る、聞いたフリをして自分の成果をあげるのに集中する、社外でストレスを発散する方法を見つける、転職するなどいくつか上がるはずです。たとえここで「今は我慢する」を選んでも、この段階での「我慢する」は先ほどの「我慢する」とは異なるはずです。

もし選択肢が思いつかなければ?その場合はここでも「まず選択肢を作る」のコマンドを選べばいいのです。先ほどのスタンスの話と一緒です。「そんなの思いつくわけないだろ!」ではなくて、一段下げて、今の状況に対してどうすることを決める。ちょっと一息入れてから考える、諦めから入らない、とりあえずやってみる。そこで決めてから実際の解決法・選択肢の中身を考えます。ググる、YOUTUBEで調べる、人に聞く、ネットでアドバイスをくれる専門家を探す等、いくつか考えつくはずです。

こうやってどうするかを選んで行動に移していく限り、現状は変わっていきます。どんな状況でも選択肢はあり、それを選ぶことができるのはあなた自身であると、それを知っておいてください。

ある程度練習も必要

ただし、これを実践でやろうとするとある程度練習は必要です。今まで何年、何十年と使ってきた自分の思考・行動パターンを作り変えていくわけですから、1回でできる方が怖いです。最初のうちは、いつ自分が負のループに戻っているのかわからないことも多いので、日記をつけるなど見える化して、自分の癖を知ることが重要です。

自己決定、選ぶ力もいわば筋トレのようなものです。選ばれた能力の高い人だけが持つ正解を出す特別な力などではなく、自分なりのその時の最善の答えを毎日の仕事・生活で考え、それを繰り返す内にスキルとして身についていくものだと思っています。

最後に、「あなたは今の自分と状況に満足していますか?」
→している場合:素晴らしいです!そのままガンガン進んで下さい!

→していない場合:どうしたらいいと思いますか?

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