視座を高める

同じことについて話をしているのに、全然違う意見になったことはありませんか。「これが問題だと思う」「いやいや、そもそもそれって、、、」といった会話はプライベートでも仕事でもよくあることです。人が違う意見を持つ理由は、もちろんバックグラウンドやこれまでの生き方からくるその人固有の価値観や考え方が違うからです。これはよく言われることで当たり前と言えば当たり前の理由です(人と意見が違ったことは一度もない、という方は逆にどうやっているのか教えてください)。ただ、実はそれだけではなくもう一つ、違いを生み出す要因として「視座」の違いがあるケースも多いのです。

そもそも視座とは

大辞泉には、「物事を見る姿勢や立場」とあります。今その人が物事をどんな位置やスタンスから捉えているかを表す言葉です。もし上司に「もう少し視座を上げて考えろ」と言われたら、それは今の立場ではなくもっと上の役職や立場から見て何がいいかを考え不安材料て判断しろ、ということでしょう。2,3年目の社員からみたら今やるべきはこれだと思っていることやここがおかしい(逆にこれでいい)と思うことが、その上司やもっと上の社長から見たらどう見えるか。会社全体の利益を考えると優先順位は違ったものになるのかもしれないし、自分の部署ではいいと思っていたことが他部署に思わぬ影響をあたえるかもしれないなど、今まで見えていなかったことが見えることがあります(←これが視野です)。

視座を上げる意味

「もし自分が社長だったら、、」「もし自分がこの部署のスーパーエースだったら、、、」の枕詞が入ると、さっきまでとは全く異なるアイディアや気づきが出てくることがあります。「これはこうに違いない」と思っていたリミッターが外れ、注意深さ、大胆さ、ひらめき、創造性や視野の広さなど、元々持っていた力が発揮されるのでしょう。今の自分よりもっと上の立場から見ようとすると、見えなかったものが見えてくる。カエサルの「libenter homines id quod volunt credunt(人は見たいものしか見ない)」とはよく言ったものです。

目的によって視座をあげたりずらしたりすればいい

仕事では視座を上げることの方が多いでしょう。ただ、視座を上げる意味が、自分のリミッターを外し見えていなかった可能性に気づくことなのであれば、目的によって上げたりずらしたりすればいいのです。行き詰まった問題の打開策を模索しないといけないとき、相手の立場に寄り添って考える必要のある時、ぬるま湯から出て何かに挑戦しないといけないとき。

「もし自分が社長だったら」
「もし自分が(自分の尊敬する)OOさんだったら」
「もし自分が織田信長だったら」
「もし自分がイーロンマスクなら」
「もし自分が恋人の親友なら」

など、枕詞を使い分けて見てください。難しければ、コーチングを使ってもいいですし、ネットで他の人がどんな枕詞を使ったのか、経験談を探して取り入れてみるといいと思います。

視座の違う相手

自分の視座がコントロールできるようになると、周囲の人がどんな視座で話しているのかにも気づくようになります。話が全然噛み合わないな、と思う時相手はどの視座で話をしているのか。自分たちのグループの責任者としてなのか、全体を見据える立場としてなのか、二人の関係性の中での被害者、加害者の立場でなのか、、、など、以前は見えていなかった前提が見えるようになります。それがわかれば、視座を合わせることができます。自分が相手の視座に上がるか、相手をこちらに上げるか、もしくはこちらが下にさがるか。

ここがズレると話がいつまでも平行線になる可能性があります。極端な例ですが、家の洗濯物を畳んでくれない旦那さんにキレる奥様がいて、その旦那様は最近修行にでて悟りを開いたとしましょう。この二人が洗濯物の取り入れ方について話し合いをするとどうなるかは、みなさん想像できるかと思います。共同作業であるはずの家事の分担者のうちの一人と、人類の救済の推進者の一人。色々前提を飛ばした極端な例ですが、言いたいことはわかってもらえるかと思います。

視座の活用

コーチングでもこの視座の移動はよく行いますが、ご自身でもできるテクニックですので是非試してみてください。何が自分のリミッターとなっていて、視座を上げた後にどんなことができるようになったのか、きっと色々なことが見えるようになると思います。